こだまのうんぬんかんぬん


あさかめの作家・演出家、児玉洋平の日常と考えたこと



vol.38 冬の飲み物   

2010.11.3

僕が好きな金木犀の匂いのする季節がやってきた、なんて書こうと思ってるうちに、もうだいぶ前に金木犀の花も落ちてしまって11月になってしまった。お久しぶりです。今年も早くも残り二ヶ月。本当に時間が経つのは早い。前回からいつのまにかもう一月以上経ってしまった。書こう書こうとは思っていたのだけど、なんとなく書きそびれたまま時間が経ってしまった。いやあ油断すると驚きます。

というわけで最近なんだか冷えてきた。まだ毛布までは出してないけれど、部屋にいる間ははんてんを着るようになった。あんまり早く冬支度すると、このあと続く長い冬に負けてしまいそうなのでぎりぎりまで本気を出さないように心がけているけれど、そろそろコタツも出てくるかもしれない。
この季節になると暖かい飲み物がとても嬉しい。僕は中学生の頃から、朝必ずコーヒーを飲んでいたのだけれど、最近は果物のジュースを飲んでいるので、以前に比べたら頻度は落ちたけれど、それでもやっぱりコーヒーが飲みたくなる。それもインスタントコーヒーをいれたりして飲む。誰かが、やっぱりちゃんと豆からひくかドリップコーヒーじゃないと駄目だ、インスタントはコーヒーっていう気がしないと言ってたのを聞いたことがある。まあ確かにコーヒーメーカーなんかでいれたりしたコーヒーもおいしいけれど、僕は結構インスタントコーヒーも好きだ。あんまり銘柄にはこだわらないけれど、大きなマグカップによく沸かしたお湯を注いでそれにたっぷり牛乳を入れる。あんまり熱いとすぐに飲めないので牛乳は温度を下げる役割も果たす。そうやって入れたコーヒーをごくごくと、ちょびちょびではなく喉を鳴らしながらごくごくと飲むとき、僕はちょっと信じられないくらいの幸せを感じる。こうやって書いてみるといかにも乱暴でコーヒーの味を追求する人なんかに見せたらひんしゅくを買いそうだけれど、でもこれがおいしいのだから仕方ない。胸の奥から体が温まってきて、ああ、冬っていいなと思うのだ。

あんまり頻度は多くないのだけど、缶コーヒーもたまに飲むとおいしい。缶コーヒーの場合もやっぱり冬の、しかも何か体力を使う作業をしたあとなんかに飲むとたまらなくおいしかったりする。大学生の頃、演劇サークルに入っていて、舞台美術の作業をしていた。作業場は大学図書館の地下にあって、通称「館下」(図書館の下だから)と呼ばれていた。そこはほとんど陽も差さず冬なんか猛烈に寒かった。一度雪が降って、階段にこびりついた氷が春になっても全然解けなかったくらいだ。そんなところで真冬に作業をするのは本当に辛くて、やっているうちにみんな少しずつ変な気分になってくる。そんなに面白くないことが妙におかしかったり、歌を歌い始めたり。そのうち、自分はここで何をやってるんだろう、という根源的な問いかけにたどり着いたりする。
そんな作業の合間に暖かい缶コーヒーを飲んだりすると、これがもう本当にうまい。当時、大学の校舎に設置された自動販売機に伊藤園のがあって、「ミルクコーヒー」というのが売られていた。普通缶コーヒーは小さい缶なのにミルクコーヒーだけ500ミリの缶で量が多かったのと、牛乳が入ってたのとで僕はよくこれを買っていた。そのミルクコーヒーを飲みながら、当時僕はタバコを吸っていたので、一服したりすると、ああ、幸せだなあなんて思った。僕はこの文章でも何度か書いているように基本的に不器用なので作業にどれだけ役に立っていたかはわからないのだけど、それでもじんわりと暖まっていく体を感じながらほっと一息ついていた。

夜は何を飲もうということをよく考えるのだけど、ノンアルコールだとココアがやっぱり嬉しい。あの甘ったるい飲み物を飲むとなんだか嬉しくなる。アルコールだとやっぱり焼酎のお湯割でしょうか。九州出身なのでね。でも今年は近所にある地酒専門店で日本酒でも買ってみようかと思ったりしてます。飲まれないように気をつけなければ。
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