こだまのうんぬんかんぬん


あさかめの作家・演出家、児玉洋平の日常と考えたこと



vol.37 夏の終わりに   

2010.9.15

もう至る所でいろんな人が言ってるというか日本国民でこの言葉を言わなかった人はいないんじゃないかってくらい、今年の夏は異常に暑いですね、という書き出しで文章を書こう書こうと思っているうちに、台風がやってきて去って行ったと同時に急に涼しくなってきた。今年の夏はいつ終わるんだろう、もしかしたら永久に終わらないんじゃないかなって馬鹿げたことまで思ってしまっていたけれど、最近は昼もそんなに暑くならないし、そうは言っても三十度近くは行くんだけども、夜とか朝はタオルケットだと肌寒いくらいだ。つまりこれは秋がやってきたということで、はっきり言って大歓迎である。でもその一方で夏が終わってしまうのかというちょっとした寂しさがあるのもまた事実で、あんなに暑くて死ぬかと思ったのに不思議なもんだなと思う今日この頃だ。

今年の夏に何をしたかと言えば、別に何もしていない。暑い暑いなんて言って麦茶を飲んでいたぐらいだ。それでも体はちゃんと変化している。そのことを心底感じたのは、痩せたからだ。
去年の11月に、人生で初めて太ったということをここで書いた。そのときは本当に驚いて、大袈裟に言うと人生観が変わるくらいだったのだ。繰り返しになるけれど、僕はこの約三十年間の人生を、ずっと痩せっぽちとして生きてきた。それが急におなかまわりがふくよかになったり、顔がふっくらしてきたりしたのだから、人生観くらい変わったっていいだろう。いやあそんなこともあるんだなと感慨深かったのを覚えている。
それが最近、ちょっとまた変わってきた。気のせいかもしれないけれど、おなかまわりがまた前のように引っ込んできたような気がしたのだ。それに気づいたのはベルトの穴が前のように、一番きついところで楽々締められるようになったからだった。太ったときは、一番きついところだとお腹が辛くて、しぶしぶもう一つ太めの穴に通していた。それが気がついたら元に戻っている。それじゃあ顔のほうはといろいろ撫でくりまわしてみたけれど、こちらはよくわからない。それでもこれはもしや、と思った僕は早速体重計に乗ってみた。結果は、58キロ。なんとすっかりもとに戻っている。ちょっとびっくりした。

でも考えてみれば、痩せた理由がよくわからない。別にダイエットに励んだわけでもないし、こんなに暑かったにも関わらず、夏バテにもならずにご飯はもりもり食べていた。。考えてるうちに思いついたのは、そういえば去年の夏は何かというとビールを飲んでいたなということだった。これも確かここで書いたけれど、去年の夏はとにかく夏らしさを満喫しようというよくわからない理由で、夏中ビールばかり飲んでいた。それに対して今年の夏は、ビールにまったく興味が持てなかった。そりゃたまには飲むこともあるけれど、お酒を飲むこと自体にそれほど積極的じゃなかった。その理由はよくわからない。多分自分の中のバイオリズムだと思う。まあしいて言えば、ビールを飲んでも体が熱くなってしまって、今年の場合それほど爽快ではないということはあったかもしれない。

これはあとで知ったのだけど、ビールはお酒の中でも太りやすい飲み物らしく、太ってきちゃったからビールをやめて他のを飲むことをしたという話をちらほら聞いた。へえ、そうなんだ、と僕は感心したのだけれど、なんだか変な感じだなあと思わなくもない。自分にはよくわからないところで脂肪がつき始め今まで増えることのなかった体重が増えたかと思えば、同じく自分のよくわからないところで増えた分がそのまますっかりなくなってしまう。言ってみれば自分の体重に振り回されたような感じだ。これが男の僕だからいいけれど、体重が気になるお年頃の女の人たちなんて大変そうだ。振り回されすぎてわけわかんなくなっちゃうんじゃなかろうか。そう考えると、もうどれが本当なのって聞きたくなるくらいたくさんのダイエット方法や食品がでまわっているのも頷ける。

まあそれはともかく、体重が落ちた僕は、痩せてる太ってるどっちがいいとかとは関係なく、今の体型のほうがやっぱり自分っぽい感じがしていいなあと思う。それは多分、長い時間こういう感じでやってきたという、単なる慣れの問題だと思う。
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