こだまのうんぬんかんぬん


あさかめの作家・演出家、児玉洋平の日常と考えたこと。



vol.17 三日坊主  

2009.9.16

この文章も17回目を迎えた。三月に始めたから半年を越えたくらいだ。途中更新頻度が下がったときもあったけれど、とりあえずは順調に続けられていると思う。この文章は自分で始めたものだし、なんの締め切りもない。これが芝居の台本ならちゃんと本番の日が設定されてるから、それにあわせて稽古開始がここで、それに間に合うように台本を仕上げようという感じで、なんとなくの締め切りみたいなものがある。でもこの文章にはそういう区切りがない。大体十日くらいずつ更新して行こうという自分の中だけの目当てがあるだけで、急かしてくれる人がいるわけではない。幸か不幸か十日で更新されないからって誰かがクレームをつけてくるわけじゃないから、それはそれでちょっと嬉しいことなのかもしれないけれど、いまのところ完全に自分のペースでやっている。そういうふうに、すべてが自分の気持ち一つだというのは、僕みたいな人間にはわりとスリリングなことで、なぜならいつでも怠けることができるからだ。だいたい夏休みの宿題だって、始業式の直前にようやく手をつけて、当然終わらず、人のを写させてもらうような要領のよさもなく白紙で出して怒られるような人間なのだから、始める前に十日ごとの更新というのをずっと続けていけるかどうか自分に問うてみたけれどちょっと自分が信用できなかったので、すぐに考えるのをやめてとりあえず始めてみることにした。だからまだ半年とは言え、地道に続けていくことができているのには、大げさかもしれないけれどちょっと祝杯をあげたいような気分だ。

でもよくよく考えてみたら、そうなんでもかんでも三日坊主で終わるというわけでもなかった。僕は小学生の頃、ピアノと剣道を習っていたのだけど、どちらも小学六年生のとき引っ越すまでピアノは六年間、剣道は五年間、最後まで辞めずに続けた。途中でサッカーも始めたのだけど、練習日が剣道とかぶってしまい、当時はサッカーの方が面白く、ちょうどゲーム形式の練習になる頃に剣道の時間になるものだから、ちょっと剣道に行くのが嫌になりかけたがなんとか続けた。ピアノは先生が怖くてあまり好きではなかったけど、とりあえず一番長く続けた。先生があんなに怒らなければもう少し楽しくやれたかもしれない。まあ下手だったから仕方ないのかもしれないけれど、下手だからってあんなに怒らなくてもいいとも思う。でもまあ居眠りしてたからな。でも順番を待ってイスに座って他の子のピアノを聴いていると眠くなってくるのだ。まあ先生ばかりが悪いわけではないのかもしれない。

この他に夏になると町内のソフトボールの大会に向けて練習が朝と夜にあり、それから二年間くらい毎朝バスケットボールのクラブをやっていた。最大で五つの習い事をこなしていたわけだから、考えてみればあの頃は忙しい毎日を過ごしていたものだ。親に勧められた部分もあるけれど、どれも自分の意志で始めた。そして途中で辞めそうなタイミングはあったけれど、とりあえず続けようと思った。なんでそこまで頑張ったのかいまいちよく覚えてないけど、途中で辞めるのが面倒だったのだと思う。先生や元のチームメイトになんだかんだ言われるのも嫌だったし、辞めたらそこまで続けてきたものがパーになってしまう気がした。それがもったいなかったのだ。それにもともと運動が大好きだったから、やること自体はとても楽しかった。

そうやって続けてきたことがじゃあ今何に役立っているのかといえば、はなはだ心許ない。何事につけ粘り強くなったかというと別にそんなこともなく、飽きると結構簡単にやめてしまったりもする。ピアノを習っていたからピアノが弾けるとか、絶対音感が身についたとかそんなこともない。あえていえば人よりほんの少しだけ歌を覚えるのが速いかもしれないけれど、現実の生活で歌を速く覚えなければならない状況なんてないし、本当にほんの少しだけなのでまったく役には立たない。ああでも、ボールを追いかけて全速力で走るときの自分の体が切る風の気持ちよさとか、相手に竹刀を打ち込むとき面の隙間から入ってくる風の冷たさを知っているのは、ちょっとだけ素敵なことなのかもしれない。
目次へ
あさかめHP

***** Copyright c 2009 Yohei Kodama. All rights reserved. *****