こだまのうんぬんかんぬん


あさかめの作家・演出家、児玉洋平の日常と考えたこと。



vol.14 夏の昼寝 

2009.8.18

夏真っ盛りだ。暦の上ではお盆も過ぎてそろそろ海にはくらげが出る頃だけど、先月末から毎日雨ばかりでなかなか梅雨も明けなかったから、最近晴れが続いたので実感としてやっと夏が来たという気分だ。僕は泳ぐことができないし、どちらかというと秋や冬の方が季節としては好きだから、例年夏が来たところでテンションが上がったりはしゃいだりすることはない。けれどどういう心境の変化か、今年は思い切り夏を満喫してやろう、いくらでも夏やって来い、いやむしろこちらから迎えに行ってやらあというくらいの気持ちでいたのだ。だから花火をしたりスイカを食べたりしたかったし、海やプールに行って泳ぎの練習をやって齢三十を過ぎてとうとうスイマーデビューを果たしてやろうとさえ思っていた。でも実際は、なんやかやと忙しくて海やプールどころかスイカさえ食べてない。夏に対する意欲は本物だったから、それがとてもとても残念なのだ。

でも夏に対する積極的な気持ちはまだまだ健在なので、できるだけ夏らしく、できるだけ夏を一身に浴びてやろうと思いいろいろやってる。まずはごく単純に、無駄に外に出て無駄に太陽を浴びてがんがん日焼けをすることを心がけている。まあでも殺す気かというくらいの日差しのときはあるので、そういう場合は日陰を選んで歩く。それからできる限り長ズボンは履かず、短パンにサンダルでいるように努めている。これも、去年くらいまではあまり短パンが好きではなかったので結構大きな変化で、今では夏に長いズボンを履かなければならないことほど悲しいことはないとさえ思っている。それからチャンスがあればなるべくビールを飲む。夏と言えばやっぱりビールだ。でも僕はビールはそんなに好きじゃない。一杯くらいならおいしく飲めるけど、あんまり飲みすぎると頭が痛くなってくる。でもこういうのは気持ちの問題だから、なんだか楽しいような気持ちになってジョッキを傾けるのだ。

とまあ要するにほとんど気分的なことに終始してるが、暇がないので仕方ない。本当なら水しぶきなんか跳ね上げてバタバタと海の中を暴れまわりたいところだが、それは来年以降に取っておこうと思う。とはいえ何度も言うけど気分的なものなので、来年の夏が来たときに同じ気持ちかどうかはわからない。流行が過ぎて、やっぱ秋とか冬がいいよなと言ってる可能性も十分ある。

けれどそんな中でも、ああこれは夏ならではの気持ち良さだなあと思ったものもある。それは昼寝だ。もちろん昼寝なんてオールシーズンいつでもできる。学生の頃なんて授業中にやってドラマかマンガみたいに時々廊下に立たされたりもした。でも真夏の昼寝というのはまたそういうものとは違った気持ち良さがある。

灼熱の太陽の下散々外を出歩く、あるいは体を動かした後家に戻って昼ご飯を食べる。食べているうちにまた汗をかき、がぶがぶ麦茶を飲む。食べ終わって汗を扇風機で乾かしているうちにまぶたが重くなってくる。これからまだやることあるのになあと思いながらも重力に逆らわず畳の上に寝転がる。この場合床はフローリングでもいい。ただし布団はひかない。あくまで流れに乗って横になる。枕は座布団かクッションを頭に当てて間に合わせる。そしてそのままうつらうつら。夜布団で寝る場合僕は横向きで眠ることもあるが、夏の昼寝は絶対仰向けで寝たい。なぜなら横向きになったとき、重ね合わせた膝や腿の間に汗をかいてしまうからだ。扇風機の音と外できこえる物音や蝉の声に耳を澄ませる。時々、短い夢を見る。大体三十分、長くて一時間くらいしてから、自然に目を覚ます。さっきより少しだけ陽が翳った気がするが、暑いのは変わらない。汗はだいぶひいた。頭がすっきりしている。

お金もいらない、ただ普通に生きているだけで味わえるぜいたくな時間だ。
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