あさかめ1回目 『名前をつけてあげる』
演出あいさつ
女の人にはイライラさせられる。物事を決めるのはやっぱり遅い気がするし、簡単に黙り込む。そうするともう何を考えているのかさっぱりわからない。わからないって言ったって、別にどうでもいいみたいな顔をして平気で黙り込んだままだ。いい加減にしてくれとよと叫びたくなるけれど、叫んだらきっと馬鹿にされるから僕もじっと黙り込んだままでいる。でもまあそうやって目が離せなくて振り回されている僕は、女の人のイライラさせられるところをイライラしながらも魅力的だなあと思っているのだろう。
と、僕は書こうと思っていた。台本を書き終え、稽古が始まる前。
でも残念ながらというか意外にというか、僕はこのお芝居に出演している4人の女の人にイライラさせられなかった。いしいさんはお酒を飲みに行けばきっぱりととりあえずビールだし、ヒザイミズキが制作的な仕事をこなす様は相当テキパキしている。はるかちゃんが楽しそうにいろいろなことを話している様は、なるほど女の人だなと納得させられるところがあるが、演出でわからないことがあれば全身でわからないことをアピールするし、いつも微笑みを絶やさないあっこさんは、嫌いな蛇のおもちゃを向けられたとき、断固とした態度でこれを払いのけ、その眼差しは力強く、ゆるぎなかった。
あら、と僕は思ったわけだ。
この女の人たちはゆるぎない。そしてそのゆるぎなさは僕にはとても魅力的に映った。女の人はゆるぎない。ゆるがせにできない岩のようなものを持っている。そういう目で見てよく考えてみればそれはそのとき初めて気がついたことではなくて、僕が書いた台本に出てくる4人の女の人も同じようにゆるぎない部分を持って生きている。
そしてもう一つ気がついたことがあって、なんだかものすごいなと僕は思ってしまうんだけど、女の人はそのゆるぎない部分を勇敢にも自分の力でゆるがせようとするのだ。自分の中にあるゆるぎない岩を全力で動かそうとしてしまうのだ。自分でもはっきりわからないままに。
このお芝居は、大体そんなお話になっていると思う。
本日はご来場ありがとうございました。ごゆっくりご覧下さい。

児玉洋平

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