あさかめ5回目 『ここにいたのにいなくなる』 演出あいさつ |
この話を思いついたのは二年前の冬、今回と同じHIGUREで芝居をやっていたときのことだ。そのときの公演は約三週間にわたる長めのもので、当たり前なんだけど、初日に来てくれたお客さんと千秋楽に来てくれたお客さんの間には三週間という時間が流れていて、それが、なんだか僕を不思議な気持ちにさせたのだ。 客席にはある人が座っている。その人は一時間半もすれば席を立ち、HIGUREからいなくなる。次の日、その席には別の人が座っている。その別の人も、しばらくすれば席を立っていなくなる。その繰り返し。これは僕の想像の中のことでしかないけれど、時間を隔てた人々の姿が、同じイスの上に、何重にも重なっている。そんな景色が見えた。 もちろんそんなこと誰も知らない。なぜならそれは「場所」にとっての話で、人のための話ではないからだ。それは「時間」にとっての話で、人には関係ない話だからだ。 だからといって、人が「場所」とか「時間」とかと無関係でいられるかといえばそんなことはなく、人は「場所」とか「時間」とかに結構あっちこっちに揺さぶられてしまう。人にはわからない「場所」とか「時間」のルールに従って、軽い感じでふらふら歩かされてしまう。 それでも人には人の考えがあるから、人はなるべく自分の好きなように振舞おうとする。僕はこうしたいんだって言おうとする。それはわりとしんどい作業で、大袈裟な言い方をすれば、戦いのようなものだと思う。このお話はそういう、「場所」とか「時間」とかの、なんていうか、適当さと、人との、戦いみたいな話です。 本日はご来場いただきありがとうございます。ごゆっくりお楽しみください。 児玉洋平 |
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