あさかめ6回目 『苔の心音』
演出あいさつ
いつも演出挨拶を書くとき、僕は物語のテーマを理解してもらうための補足的な文章を書いているのだけど、今回は、そういうものはすべて本編に詰め込んでしまったので、あまり書くことがない。なので、かわりにこのお芝居を作っていたときに僕が考えていたことを書こうと思う。何を考えていたかというと、今、自分には何が必要で、自分は何を生み出したいのかということだ。とても単純に、率直にいってしまうとそれは、この世の大部分を覆っている時間とは違う、時間の流れ方をしている空間だ。ある大きな流れが生まれると、時間や物事は、一方向にしか流れなくなってしまう。そのことは意識しないうちに、僕らの歩き方や考え方に大きく小さく影響を与える。気づかないうちに、僕らは決められた方向にしか進まないし、決められた考え方しかしなくなる。最近、特にその傾向が強くなっているように思う。それが、僕にはなんだか気持ち悪いし、恐ろしいのだ。だから、違う時間の流れが欲しい。それを体感したい。それを生み出すために、僕はこの物語を書いたし、これからも僕はそういうふうに物を作っていくのだと思う。

あとは観客の皆さんに観てもらうだけだ。どうかゆっくりと時間を過ごしていってください。

児玉洋平

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